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 プログラムについて                             石村 洋
 1 愛のロマンス(映画「禁じられた遊び」テーマ曲)
 「ギターとひととき」では毎回、ギターを愛するすべての人に愛されてきた『禁じられた遊び』の「愛のロマンス」
 をオープニングに、「アルハンブラの思い出」をエンディングに演奏することにしています。今回は初回を記念し
 て映画『禁じられた遊び』の中で20世紀の名ギタリスト、ナルシソ・イエペスが演奏していた音楽を特集して弾
 きたいと思います。ところで、『禁じられた遊び』と、次の『武蔵野』のどちらも第二次世界大戦に関係した音楽で
 もあります。それぞれの作品に関係した年表を添付し、ここに平和への思いを新たにしたいと思います。
 
 
  | 1933 1月 ヒットラー首相就任1939 8月 ポーランド侵攻1940 6月 ドイツ軍パリ占領
 1944 8月 パリ開放
 1945 5月 ドイツ無条件降伏
 1952 映画「禁じられた遊び」
 | 1941(昭和16)12月 真珠湾攻撃19431月 音詩集「武蔵野」成立
 同年 4月 
  赤城氏 入隊
 同年10月 21日 神宮外苑で
 学生の出陣式
 1945(昭和20)8月 日本無条件降伏
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  イエペス
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  赤城淳
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 2 ある出征学徒の音楽@  音詩集「武蔵野」      赤城 淳 古い手書きの5線紙の表紙に右の表のようにタイトルが書かれていてその裏には 
        
          
            | 音詩集「武蔵野」
 
 T 道  U 欅  V 古刹  W 薄  X 丘
 
 (失われゆく武蔵野の思い出に)
 | (forGuitarSolo) 
 〜音 詩 集〜
 武 蔵 野
 昭和18年1月
 赤城 淳 作
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 とあります。作曲者の赤城先生は戦後、マンドリン合奏の指導者として活躍して来られ、マンドリン合奏曲の作曲・編曲も
 数多く手がけて来らました。昭和18年の1月には、早稲田大学の学生だったのですが、4月には卒業と同時に軍隊への入隊
 が決まっていたそうです。これから戦地に赴こうとする青年がどのような心を郷土に残して旅だったか容易に想像させる音楽で、
 若者らしい純粋な美しさに心を惹かれます。同じ時期、『武蔵野』のほかにも数曲のギター独奏曲を書いていますが、機会があ
 りましたら、ご紹介したいと思います。
 
        
          
            | 3 ギタリスト村の紳士録@ 〜レオ・ブローウェル(1939ハバナ生)〜 日本でいわれる団塊の世代と同世代以後の世界中のギタリストの中に、ギター演奏の能力とともに
 作曲の才能もある人が多数輩出し、現在のギター界は面白い状況下にあります。思いつくままに名前
 を20人くらいは、あげられるものと思いますが、ギタリスト村の紳士録という特集では、こういう人達の
 作品を取り上げていきます。これらの人達に共通して言えることは、モダンな感覚を持っていること、
 また、純芸術的な
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            | 作品に力点を置いている人でも、ポップな感覚をも持っていることです。そのため、 これらの人々の作品はギター界で大きなポピュラリティーを獲得して、近年のギター
 コンサートのプログラムの半分程度を占めるに至っているように思われます。レオ・
 ブローウェルはこの人々の先鞭をつけた人で、現在も作曲家として活躍中です。
 第2次世界大戦後の前衛音楽の影響を受けて出発し、今日ではかなりポピュラー
 音楽に近い作風になって来ているように思います。ここで取り上げる4曲はほぼ
 作曲年代順にならんでいます。どの曲も、その時々のギター界で大変に流行した
 曲ばかりです。
 | レオ ブローウェル
 
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 4 楽しいギターのお稽古@
 ギターの稽古は、教科書と副教材を併用して行きます。今日ではギターの教科書として色々な本が出版されてい
 ますが、私は昔から使われている「カルカッシギター教則本」が、実力をつけるのに一番だと思います。こういう曲は、
 演奏会で取り上げられることも鑑賞用にレコードで聴かれることもありません。ギターを練習したことのある人は誰も
 が知っていますが、それ以外の人はほとんど聴く機会が無いでしょう。まさにギターの世界の内部でのみ流通してい
 る音楽です。けれども練習専用のつまらない音楽かというと、そうではありません。ギターという楽器に相応しく優しい
 世界を体現したような可憐な曲ばかりではありませんか。
 
 5 名曲集@
 
 
  | さくら変奏曲というと同じタイトルのお琴の宮城道雄の作品が有名ですが、ギターのための横尾幸弘の作品も、それに劣らぬ名作だと思います。横尾先生は1925年生まれ、大分県日田の出身です。私の師、奥田紘正とも親しく、私が子供の頃から色々教えていただきました。さくらの花びらがハラハラと舞い落ちるような第1変奏、お琴のような効果の第2変奏、情緒纏綿たるトレモロの第5変奏など聴き所満載です。
 アストリアスはギターのための音楽ではありません19世紀の大ピアニストでスペイン民族主義音楽の祖とも言われるイサーク・アルベニス(1860-1909)の最もポピュラーなピアノのための小品です。
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 CD「横尾幸弘の世界」
 私も「さくら変奏曲」
 などを弾いています
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 アルベニス
 |  6.くるみ割り人形組曲  チャイコフスキーの作品の中では6つの交響曲以上に、3大バレエ曲が近代の芸術史上、意味深い存在だと思います。チャイコフスキーはバレエ曲「くるみ割り人形」から8曲を取り上げて管弦楽用のバレエ組曲を作りましたが、ここ
 ではその中の5曲を演奏します。古来、バッハ以外の大作曲家の音楽をギターで演奏することは稀ですが、私はギター
 という楽器の将来の発展のために、そういうものに果敢なる挑戦を続けてきました。単に好きだからやっていることだ
 ろうと言われるのは真に心外なのです。
 7.アルハンブラの思い出 この曲で本日の演奏は終わりです。この曲の前にアンコールの声をかけていただけると嬉しいです。
 
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